内閣府では、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)という取り組みを去年から実施しています。合理的根拠に基づき、かつ効果を測定できる政策立案を行うことを目的としています。
https://www.cao.go.jp/others/kichou/ebpm/ebpm.html
EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。 政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。
具体的に何をするかといえば、政策によってできる「ロジックモデル」を合理的根拠政策立案推進室と協力の上作成、提出すること、とされています。資料「内閣府本府におけEBPMの取組について」でそのロジックモデルを見ることができます。
ロジックモデルを下記に引用します。予算を使って行うアクティビティがまずあり、その結果としてのアウトプットやアウトカムがあります。そして、アウトプットやアウトカムを何によって測るか記載する項目があります。(カタカナが多くなりました)
上記EBPMの取り組みが実際に開始されるのは今年からであり、実際に使ってみた結果を通して常に改善されていくものと思われます。また、いろいろな批判的検討をしている組織や人もいます。
そこでこの記事では、上記のロジックモデルから実際に効果検証を行う際に必要な観点について考えてみます。大きく3つあると考えます。
1.「この政策がなかったときの結果」を測らねばならない
一般論として、効果検証とは「政策がなかったときのアウトカム(またはインパクト)」と「政策介入した時のアウトカム(またはインパクト)」の差を測ることだと考えています。それがインプット(予算)に見合っているかどうかが政策の費用対効果です。
一方で、上記のロジックモデルからは、「この政策がなかったときのアウトカム(インパクト)」という事前の見積りの項目がありません。つまり、政策決定の際の比較対象がないということになります。効果検証の際にはまずそれを何らかの形で作る必要があります。
2.「政策以外でアウトカムに影響する要因」を洗い出す
「政策がなかったときのアウトカム(インパクト)」は、政策以外のいろいろな要因で決定されます。上記のロジックモデルでは、右下の「その他の関連事業・施策」に該当する部分です。
一方で、関連事業や施策を洗い出すだけではおそらく不足であり、社会の自然な変化や民間の取り組みなど、政策の効果に影響する要因はさまざまでしょう。また、世の中の流れと政策が合っている場合は、「政策があってもなくても自然にアウトカムが達成される」場合も十分ありそうです。これはインパクトだけでなく、初期や中長期のアウトカムであっても同じです。
そのため、検証の際には、政策以外で影響しそうな外的要因を新たに追加する必要がありそうです。
3.現実の因果関係における政策の位置づけを明確にする
まず政策介入とは、それがないと実現できないアウトカムやインパクトがあるから行うものだと考えます。一方、いまのロジックモデルの記法には施策以外の要因の記述がありません。施策と期待される効果だけが強調されるため、政策が現実の因果関係のどこに位置するものなのかが不明確になっています。
データ分析でいう因果モデルをまず作り、要素間の影響を明らかにしたうえでないと、政策以外の影響を除外した有効な政策効果検証を行うことができないと考えています。政策による後押しや介入がなければ、因果モデルにおいてここのリンクがつながらない。だからこの政策でつなげて良い結果をもたらしましょう、というのがロジックだと思います。
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