データ分析:分業体制に潜む問題と対策 1


データ分析は時として大人数のチームになることがあります。


特に専業の会社に発注して行うデータ分析プロジェクトが該当しますが、大規模なプロジェクトでなくても、

顧客への説明や案件管理を行う人
実際にデータ分析を行う人

に分かれて進行している現場も多いのではないでしょうか。


それぞれ、さらにもう一段階分離し、 

1.分析補助者:データの前処理、集計、報告書作成補助

2.分析者:分析設計および実施、報告書作成

3.マネージャ:プロジェクト管理、品質管理や顧客説明責任

4.顧客担当営業:リード獲得、受注および契約管理

のような役割分担になることもあります。 


加えて、特定業界や商品の知識を補うコンサルタントや、データの不明点に回答するデータ提供元会社などの第三者が加わることもあります。 



分析の役割分担とそれぞれの担当に起き得る問題

上記のような分業体制はそれぞれ得意分野を補うために便利です。また、メンバーが多いほうが説明を受ける側も安心感があることも確かです。 


一方、分業体制の中で適切な連携が取れていない場合は、1人ですべての役割を行ううえで出てこなかったさまざまな問題も起きえます。ここでは、データ分析を上記4つの役割に分担して行う場合によくある問題について、担当別に考えてみます。  


下の例は受託型のプロジェクトを前提にしますが、分業制で実施する組織内の分析でも同様のことがいえます。



1.分析補助者

分析補助者はデータを最もよく知っている

分析補助者はデータの確認、前処理、集計などを主に担当します。データ構造によってはエンジニアとしての高度な技術が求められる一方、Excelや手書きなどの汚い情報を補正して起こすこともあります。結果として、分析補助者はデータに最も長い時間触れることとなり、また、元データを直接確認する唯一の担当であることも少なくありません。 


一方、分析補助者は顧客課題を深く知る機会がない

一方、多くの場合分析補助者はプロジェクトの専任でなかったり、アルバイトや外注などの非正規職であることがあります。この場合、プロジェクトの意味やゴール、作成したデータの分析手法などを伝達されず、作業内容のみを割り当てられます。データの確認等を除き、顧客と直接やり取りをすることは稀な立場です。 


そのため、データからわかる事実が顧客に伝わりにくい

プロジェクトで解きたい顧客課題のうち、分析せずともデータ自体から分かることは多いものです。まず簡単な確認や可視化、集計で判明した事実を顧客に伝えることで、その先の分析への理解が高まり、また、分析によって得られる付加価値を分かりやすく示すことにもなります。 


しかし、元データそのものを扱い、データに最も長い時間触れている分析補助者に顧客課題が伝達されていなければ、その機会は失われてしまいます。課題感が与えられていない以上、何を知りたいかを発見することはできません。また、適切な集計や資料化によってそれを顧客に伝えることも当然ながらできません。 


2.分析者

分析者はプロジェクトの最も重要な部分を担当する

分析者はプロジェクト目的を達成するための分析実務全般を担当します。いわゆるデータサイエンティストはここに該当することが多いです。数理モデリングや統計学、コーディングの素養が求められ、分析補助者と協働して業務を行います。  


一方、分析者は「なぜデータ分析なのか」を知らないことが多い

分析者は契約前の技術営業に参加することがありますが、多くの場合、受注確度が高まり、「分析を行う」ということが決まってから、どんな分析を行うかの具体的な提案を行います。また、顧客への結果説明も業務に含まれますが、マネージャや営業が代行することもあります。 


そのため、元々の課題や期待値が分析に反映されにくい

分析者が何を達成すべきかは多くのプロジェクトである程度明確です。一方、どんなプロジェクトにもそれを行う背景や、始める際の期待値があります。 


「何を達成するか」は分かっても、「なぜ今回の課題解決にデータ分析を選んだのか」「この課題に対して、この手法だからこそ与えられる価値は何か」を理解して初めて、顧客が持ちえるデータ分析以外の解決法や、データ分析への期待値、あるいは、分析結果に基づいて行動するリスクをどの程度許容できるか、といった、プロジェクト目的の一歩先にある本当の顧客満足につながる視点からの手法設計や実装を行うことができます。 


一方、それら背景や温度感はプロジェクトが始まってからではなく、むしろ始まる前の営業フェーズで検討されることです。分析者がプロジェクトゴールの設定に関与していないか、あるいはそれをよく理解していない場合は、報告書の体裁や文言は立派でも、肝心の分析がそれについてきていない、というような結果になりかねません。 



⇒ データ分析:分業体制に潜む問題と対策 2  に続きます

ヨカヤム

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