以下はデータ分析:分業体制に潜む問題と対策 1 の続きです。
3.マネージャ
マネージャはプロジェクトに対して責任を負う
マネージャは営業から納品までのプロジェクト管理を主に担当します。分析経験や顧客折衝経験の長い管理職が担当することが多いです。分析プロジェクトでは、データや分析の不備、顧客コミュニケーション、メンバーの管理などさまざまな問題が起き得ますが、それらに対して責任を負い、適切な対応を取ることが求められます。
一方、マネージャは分析そのものには関わらない
一方、マネージャは多くの場合複数のプロジェクトを兼任するため、特定の分析に時間を割けません。営業フェーズからスタートまでは密に関わりますが、分析自体には関与せず、分析者から上がってきた報告書をレビューするところから再度そのプロジェクトに戻る、という関わり方が多くなります。
このような場合、どんな問題が発生するでしょうか。
顧客に役立つレビューや提案の不足
実際に手を動かす分析者と異なり、マネージャは課題設定から結果報告までの分析全体を俯瞰できる立場です。「他のプロジェクトや他社事例と比べて、このプロジェクトはこの点が良い、または悪い」という、いわゆるお墨付きを与える立場です。これは対メンバーでも対顧客でも変わりません。
一方、全く同じ分析課題を解決する場合でも、実際の分析難易度は顧客個別の組織体制、業況、施策の種類、データの整備状況など、さまざまな要因で大幅に変化します。 これらの要因は、傾向や偏り、欠損など、様々な形でデータそのものに反映されており、当然ながら、それを使った分析設計や結果にも大きく影響します。
あるケースで採用できた手法が他のケースではうまくいかない、ということはむしろ普通です。 そのため、単純にプロジェクト目的を達成できた、出来なかった、という評価では不十分であり、
「今回の場合は何が特徴的で、何が難しかったのか」
「それを踏まえて、次に何をすればよいか」
かを顧客に伝えることが重要です。
それによって、今回の分析結果の活用に当たり気を付けるべきことや、普段からのデータの見方、今回はなかったがぜひ取得しておくべきデータなど、より顧客に役立つ振り返りをすることができます。
そうでない場合、「一般的にはこの課題に対してこの分析は上手く行くので、今回も上手く行きました」という平板な評価になってしまいます。分析が満足いくものであれば良いですが、そうでない場合は、次回はおそらくないものと思われます。
上記のような分析全体での振り返り不足は、特に担当営業の今後の提案に対して悪影響を及ぼします。これは次の項目で検討します。
4.顧客担当営業
担当営業は課題に対してデータ分析を提案する
担当営業はリード獲得から納品までの全てのプロセスに関わります。データ分析は形のないものであるため、個客の悩み事ややりたいことなどの要望を具体的な課題やソリューションに昇華したうえで提案する必要があります。 組織によって役割や肩書は違いますが、シードからリードへ、リードから受注へ導く営業の役割は極めて重要です。
また、営業担当は分析期間中や、あるいは分析終了後に至るまで、分析による顧客満足という点にもっとも関心のある立場です。
一方、担当営業は具体的な解決には関与しない
一方、担当営業は通常分析そのものには関与しないため、顧客満足を測る指標はあくまで顧客の意見です。分析に至らない点が見られた場合でも、「自分が持ってきた課題をどうすれば解決できるのか」ということは、基本的に分析者やマネージャに全面的に任せなければなりません。
このような場合、どんな問題が発生するでしょうか。
課題に対して何が良いのか深く知ることができない
担当営業はプロジェクト前後の顧客の反応や実際の業務を確認して、実際に分析が満足のいくものであるか知ることができます。
また、プロジェクトが成功した場合も営業にとってそれはゴールではなく、同じ分析の発展的継続(縦の展開)、他の課題についての提案(横の展開)をしたり、今回の事例を他社への提案に活用するための準備をする必要があります。
一方、
「本当にデータ分析が今回最適なソリューションだったのか」
「この分析は課題とあっていたのか」
については、実際に分析にかかわっておらず、かつ、マネージャ以下から情報が上がってこない限り、営業は知ることができません。 たとえプロジェクトが上手くいった場合でも、課題が簡単だったから、分析メンバーが凄いから、たまたま上手く行った・・・など、状況により様々です。
また、プロジェクトの進行や結果に難があったときは、振り返りがなければ、営業として安心して次の提案ができないこともあるでしょう。 特に継続して同じ分析を使う場合は、特定範囲のデータが持つ何らかの傾向が上手くはまって、たまたま上手く行ったが、データが変わったら全く別の結果になった、ということは分析実務でよくあることです。
リスクを負って実際に分析結果を利用する顧客に対する信頼性を担保するために、分析全体の振り返りとその伝達は常に必要です。
また、課題の切り出しはできても、それに対する最適なソリューションが分からないままということは、提案やコスト感がずれたままになってしまうことを意味します。何とか上手くは行ったが、コストや顧客ニーズと難易度が合っていない分析を事例化してしまい、次回以降の案件で顧客と分析側の板挟みになってしまうこともありえます。
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