データに基づく意思決定ということが言われています。 内閣府で進めているEBPMのような取り組みや、民間企業での可視化プロジェクトなども広い意味でその一部と考えています。
データに基づく意思決定を行いたい理由は組織や課題により様々です。一方で、それによって何を得ようとしているかはある程度共通していると考えています。「データに基づく意思決定」のメリットは、おおむね以下の3点に集約されるのではないでしょうか。
・意思決定を参加型にする
・意思決定に客観的な根拠がある
・意思決定のプロセスを透明にする
一方で、当然のことながら「データを使ってロジックを組み立てている」ことがただちにこのような 意思決定を導くわけではありません。むしろ、データを使ったことで、本来求めていた意思決定のあり方から遠ざかることもあり得ます。
ここでは、より良い意思決定という観点から、上記3つの目標のそれぞれを満たすにはどのようにデータを使えばよいか考えてみます。
参加型:データ理解のための背景や文脈が明確
意思決定が参加型であるためには、当然のことですが、参加するためのハードルが低くないといけません。つまり、初めてそのデータを見る人にも分かりやすいデータの表現である必要があります。
また、特にいろいろなバックグラウンドの人が参加する場合は、「一見難しいデータだが、実はこう読む」という経験知や、「皆分かっているでしょう?」という暗黙知を極力なくすか、あるいは読んですぐわかるように明確なものでなければなりません。上記を満たさない場合、データの内容についての誤解や、データの取得元や数字の定義について議論が発生するような面倒な状況が起き得ます。
特に参加型の意思決定の場合は、話し合いが面倒になると、議論の場から退出したり、積極的に参加しなくなる可能性もあります。一度参加した人が肝心の意思決定を行う前に離脱しないよう、あくまで意思決定を助ける観点からの分かりやすいデータが求められます。
客観的:データの選択基準や加工意図が明確
データは人が作るものであり、それを加工して意思決定の場に持ち込むのも人です。完全に客観的な情報はありえません。その中での客観性とは、「なぜそのデータを選んだのか」「なぜこういう加工をしたのか」について、意思決定の参加者が理解でき、そのうえで判断できる可能性を担保することだと考えています。
定義や調査対象などの違いから、情報源によって違う数値が出ていることもあるでしょう。 また、データの不足など、求められるものに対して不十分な場合は、これ以上細かいデータが取得不可能であることや、現状でなぜ取れないかを示すことで、客観性に最大限配慮していることを示すことができます。
もちろん、自分がやった作業について完全に客観的であることはできません。 一方、データの取得方法や定義について誰もが議論に必要な情報を得られるようにすることで、似たような効果を得ることができるでしょう。「このやり方が正しいから」というのは常に不十分で、「何をやったかを明らかにする」ことが大事です。
透明性:データが与える解釈や示唆が明確
開かれた意思決定プロセスとは、誰がどういう判断をしてその意思決定に至ったか明確になっているということをここでは指します。その場合は、ごく自然な解釈ができるようなデータが提示されていれば、 それによる判断も明確になると考えられます。
また、わかりやすい解釈ができるデータであれば、その示唆するものと最終的な意思決定が異なる場合、なぜ違ったのか意思決定者に説明を求めることができます。その意味でも、明確な解釈のできるデータが透明性に貢献するところは大きいと思われます。
一方、解釈や結論のわかりやすさを強調するために細部を省略しすぎると、今度は客観性や定義が損なわれてしまいます。結論ありきにならないよう、事実に対するアクセスを担保したうえで、分かりやすく提示することが求められます。
「なぜその意思決定に至ったか」
上記のように、より良い意思決定に資するデータを作るのは実際にはなかなか難しい作業です。
一方で、ここでは「参加型」「客観的」「開かれた」としていますが、3つ全ての条件が求められる意思決定は多くないかもしれません。少数の人が責任を持って決める場合は「参加型」ではなく、その場合は分かりやすいデータである必要はないかもしれません。また、責任者1人で決める場合は、客観的である必要はないので、いかようにでもデータを使えます。
しかし、そのような場合でも、「なぜその意思決定に至ったか」振り返ったり、人に話す機会はあると思います。その際、上記のような観点で作られていないデータを使って意思決定をした場合は、なぜその結論に至ったか、困難を感じるのではないでしょうか。せっかくの「データを使った意思決定」も、それが説明できないのではあまり意味がないと思われます。
データの取得や加工などのプロセスを明確にしておくことは、良質な意思決定につながりやすいこととともに、意思決定者の身を守ることにもなります。
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