内閣府「消費動向調査」では、世帯の暮らし向きや雇用環境などの消費者の景気感覚を毎月調査しており、回答結果をもとに「消費者態度指数」を作成しています。
それによると、令和2年4月以降の消費者態度指数の値は、調査開始以降最低となりました。
経済活動自体が不可能、というこれまで経験したことのない事態であり、金融危機や震災等とは明らかに違うマインドの落ち込みになっています。
このエントリでは、「消費者物価指数」に基づいて、今回のコロナ禍をリーマンショック、東日本大震災と比較したいと思います。
消費者態度指数の算出法
消費者態度指数とは、今後半年間の「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の4項目について思うことを、調査対象世帯にそれぞれ5段階評価で回答してもらった結果を得点化したものです。
※その他、指数に含まれない「資産価値」という回答項目もあります。
5段階で最も高い「良くなる・増える」を1点、「悪くなる・減る」を0点とし、その間の3項目をそれぞれ0.25点間隔でポイント化したうえで、4項目の点数を単純平均したものが「消費者態度指数」です。
仮に全員がすべての項目で「良くなる・増える」と答えたなら100、逆に全員が全項目に「悪くなる・減る」と答えたなら0点となります。
コロナ禍(20年4月)の消費者態度指数はリーマンショック時の底を下回る
上記の通り、消費者態度指数が急減したタイミングは、表中のリーマンショック時(2007~8年)、東日本大震災(11年4月)および今回のコロナ禍と3点あります。今回の底はリーマンショックを下回る21.3ポイントと、リーマンショック、東日本大震災の底をさらに下回っています。リーマンショック時の底(26.2ポイント)と今年4月の差は4.9ポイントです。
消費者態度指数は2018年後半あたりからゆるやかに下降をはじめていましたが、19年後半にやや持ち直した後、今回の急落となりました。
なお、5月には若干上昇し24.1となっており、4月で一応底を打ったものとみられます。この後で見るいずれの指標も4月が底になっています。
繰り返しになりますが、消費者態度指数は「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の4項目それぞれの指標の単純平均です。これらのうち、どれがもっとも今回の指数の下げに寄与しているのでしょうか。
「暮らし向き」は2008年の底より7.3ポイント低い
まず「暮らし向き」の変動を見ると、リーマンショック時は2018年8月、12月と2回の底があり、また、底の状態が8か月程度続いていました。一方、それでも28.5ポイントはあり、今年4月の21.3と比べて7.3ポイントの差があります。
4月はまさに緊急事態宣言中であったため、今後の経済活動に対する悲観的な見方が国内を広く覆っていたことがわかります。
⑴ あなたの世帯の暮らし向きは、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、悪くなると思いますか。
「収入の増え方」は2008年の底より5.0ポイント低い
「収入の増え方」も過去最低の値になっています。この変動を見ると、リーマンショック時の底は2009年2月の31.1ポイントであり、今年4月(26.1)と比べて5ポイントの差があります。
この差は「暮らし向き」の7.1ポイントと比べてやや小さく、「今後の収入」については、「暮らし向き」ほど悲観的な人が多いわけではないようです。
⑵ あなたの世帯の収入の増え方は、今後半年間に今よりも大きくなると思いますか、小さくなると思いますか。
「雇用環境」はリーマンショックの底のほうが低かった
「雇用環境」についての態度も悲観的ではあるものの、リーマンショック時の底(2009年1月)よりは0.7ポイント高い値にとどまっています。
当時と比べると、少子化に伴う人手不足がより顕著になっていることもあり、また、金融危機と違って実体経済そのものが悪いわけではない、という意識も影響していそうです。
⑶ 職の安定性、みつけやすさなどの雇用環境は、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、 悪くなると思いますか。(ご自身やご家族、近隣地域の状況からお答えください。)
「耐久消費財の買い時時期」も過去最低になっている
「耐久消費財の買い時時期」も過去最低になっています。
不要不急の買い物はできないという物理的な問題もさることながら、今後の家計についての見方も、リーマンショックや震災以上に悲観的になっていることがうかがえます。
⑷ 耐久消費財の買い時としては、今後半年間に今よりも良くなると思いますか、悪くなると思いますか。
6月以降はどういう戻り方になるか
いずれの指標も5月には若干リバウンドしており、これ以上何か起きない限り、消費者態度もリバウンドしていくものと思われます。
リーマンショックの場合は、「元(2006年)」の水準がバブルであったため戻りを見ても仕方ありませんが、東日本大震災後はどの指標もおおむね1年程度で元の水準近くに戻っています。
今回のコロナ禍から消費者態度がどう復活するか、月次データで確認していくことも何かの役に立つかもしれません。
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